勉強カフェ岡山・読書会記録2017 vol.10

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勉強カフェ・新読書会
今回は2017年10月に開催された読書会の記録です。この回は参加者2名で楽しく本の話しができました。紹介した本はこちら。

『私の男』桜庭一樹

『23区格差』『23区大逆転』池田利道

 

まず桜庭一樹著『私の男』について。こちらは女性の参加者の方が紹介してくれました。
養子縁組の親子である父「淳悟」と娘「花」の関係を描いた作品です。花は9歳の時に震災で家族を亡くし、遠い親戚であった淳悟(25歳)に引き取られました。淳悟もまた早くに父親を亡くし、母親も既に亡くなっている孤独な生活者でした。2人の関係は花が結婚する24歳までが描かれていますが、その様子は章を経るごとに過去に遡るという形式で書かれています。

この本を紹介されて、あらすじを聞いて、最初に感じるのは「私の男」というタイトルの理由ではないかと思います。「私の父親」ではないという所に、登場人物たちの一筋縄ではいかない関係が示されているように予感され、実際、淳悟と花の関係の濃密さは社会規範や道徳といった目のみを持って解釈出来るものではなさそうです。

小説というのはフィクションですが、その内容をどう受け止めるかという時、浮き彫りにされているのは、私達読者の方の考え方、判断基準であり、欲望と言ってもいいかもしれません。ちなみに、私がここで使っている欲望という言葉には、特に善悪の意味を付与してはいません。例えば「社会正義=善、個人的欲望=悪」というような考えではなく、「社会正義を求める事」も「個人的な満足を目指す事」もどちらも欲望だと考えます。
ですから、ネット上にある『私の男』に対する感想は賛否両論ですが、その数々の言葉から見えてくるものが各人の欲望なのではないかと私は感じました。

この本を紹介していただいて興味を持ち、一通り読み終えた後の私に残ったのは、ところどころの内容に対する好き嫌いなどの感想ではなく、漠然と、この広い世界の一角に固有の事情を持ちながら生きている人々の、のっぴきならない現実を見せられたというような気分でした。フィクションでありながら、もしかしたらこの世の中にこういう風に生きている人達がいるかも知れない。私は彼らをどう評価するのか、また私の思うままになされた評価が、現にそうして生きている人達の実情に届き得るのか。そういった事を考えさせられました。

 

 

次に池田利道著『23区格差』『23区大逆転』について
こちらの2冊は、東京23区とひとくくりに紹介されがちな東京都心部を1区1区詳細に見ていき、それぞれの特徴を明らかにした書籍であり、先に『23区格差』が、後に『23区逆転』が出版されています。

これらの本を手に取ったことの理由の一つに「物事を判断する時の尺度が知りたい」というのがありました。全国的に少子高齢化が進んでいるだとか、空き家率の増加も問題になってきているなど、様々な情報に触れる昨今ですが、そもそも私が住んでいる岡山県岡山市はどういった市町村なのか?という事が良く分かりませんでした。
加えてどういった点が優れていて、どういった点に課題があるのかを、どのような尺度から導けばいいのかという事も知らなかった訳です。

『23区格差』の第2章のタイトルは、ニーズで読み解く23区格差となっており、
代表的な住人のニーズとして
①「子育て支援が厚い区は」
②「病気になっても心強い区は」
③「便利な暮らしができる区は」
④「シルバーパワーがみなぎる区は」
⑤「災害時にも安心・安全な区は」
⑥「交通事故・犯罪リスクの低い区は」
の6つの観点から、23区が比較検討されています。

例えば①の子育てに関しては、「幼児人口増加率」を「総人口増加率」で割った「幼児人口増加特化度」という基準が用いられており、この値が1.0以上だと、総人口の増加率以上に幼児人口の増加率が多い=相対的に幼児の方が増えているということになります。東京23区の様に自治体を跨いでの引っ越しが容易な状況を考えると、この「幼児人口増加特化度」が高い区では、ファミリー層の転入や、その区での出生数の増加が考えられます。そこには子育て支援に関する行政上の取り組みがあったり、地域の景観や住民の相互扶助意識など様々な要素が影響しているのでしょう。
本書の中では、「幼児人口増加特化度」が高い品川区について、子どもの登下校の時間帯を地域住民で見守ろうとい「83運動」が小学校PTA連合会長の発案で始まった地区であると紹介されていました。こうした地域発の取り組みなどに見られる「共同体の力」も子育て中の人々の安心に繋がり、ファミリー層を呼び込んでいるのかも知れません。

子育て支援の厚さというものを「行政からの支援の厚さ」と考えれば、「政治」の問題となりますし、地域住民の取り組みに焦点を当てれば「共同体の文化や特徴」となってきます。

私達はどのような生活を目指し、どのように「主体的に生活圏をデザイン」していくのか。この本からは住人のニーズ(評価基準)を知ることが出来たり、区ごとのデータ差から見えてくる、歴史的、文化的な街の個性を知ることができました。
すぐに何かの役に立つという学びではないかも知れませんが、私達が生活している「都市」に対する見方を教えてくれる本の1つとして、参考にしてみて下さい。

 

以下、本読書会の基本情報を掲載します。

勉強カフェ岡山スタジオで開催している読書会は、それぞれの方がお好みの本を持ち寄り、自由に紹介していただくという形式をとっています。他の参加者の方との雑談を通して、新たな価値や自分の今までの認識を発見するといった側面に重きを置いています。
今までの読書会では、海外文学小説、日本現代小説、エッセイ、人文系哲学新書、科学エッセイ、ビジネス実用書などが紹介されました。参加者の方は、特定のジャンルの本の紹介をしていただいてもよいですし、或いは多様なジャンルに挑戦してみても面白いかもしれません。

書籍の内容紹介、人に感想を発表するなんて大変だ、とお思いの方。

私達も手探り状態で読書会を開いていますので、まだまだ正解はありません。初参加の方も他の方の発表をみて学び、気軽に意見を交換してみましょう。

皆様の参加をお待ちしています。

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開催日時: 19:00~22:00の間で2時間程度 毎月第3・4週の平日開催
開催場所:勉強カフェ岡山スタジオ内セミナールーム
定員:5名程度
参加費:会員、非会員とも無料(ただし非会員の方は時間分の勉強カフェビジター料金1,080円を頂きます)