勉強カフェ岡山・読書会記録2017 vol.9

勉強カフェ・新読書会
今回は2017年9月に開催された読書会の記録です。今回は参加者3名で楽しく本の話しができました。紹介した本はこちら。

・『女子のしあわせを引き寄せる 神様カタログ』戸部民夫(監修)、いとうみつる(イラスト)

・『イノベーションの神話』Scott Berkun(著)、村上雅章(翻訳)

・『人はなぜ物語を求めるのか』千野帽子

 

まず『神様カタログ』について。
この本は毎月読書会に参加していただいている会員の方のご紹介です。今回はちょっと趣の違う「日本の神様」についての本でした。

「日本は八百万(やおよろず)の神の国」と言われるほどに神様がいっぱい!それぞれに得意な事が違ったり、「どこにいるどういった由来の神か」ということが、ゆるキャラのような可愛らしいイラストと共に紹介されている楽しい本です。

中には「女子力を高めてくれる神様」なんて今風の表現で紹介されている神様も。「女子のしあわせを引き寄せる」とタイトルにある通り、恋愛や健康、夢やお金のことなど、「困った時の神頼み」をどの神様、神社に行ってすればいいのか分かるという、本当にカタログのようにパラパラと眺められる楽しい本でした。

 

次に『イノベーションの神話』です。
この本は前回から読書会に参加して下さっている方が紹介してくれました。
「イノベーションの神話」というタイトルだけでは、具体的にどういった内容の本なのかが想像しにくいですが、分かりやすく言葉を補って説明するなら、「イノベーションの社会的影響だけに注目した人々が、しばしばイノベーション(イノベーター)を伝説化したり神話化する。この事はイノベーションの本質とは関係ないばかりか、人々に誤解を与え次のイノベーションを阻害する事すらある。この本では、そういった誤った神話や伝説を解体し、真にイノベーションに必要な事柄を丁寧に見出していく」というようなものになります。

第1章のタイトルは「ひらめきの神話」となっており、これが最初の神話として記されているのは、多くの人が「イノベーションは、ただ一人の天才のもとにある日突然、発明の啓示(ひらめき)がもたらされて起こる」と考えているからでしょう。万有引力を見出したニュートンのリンゴのエピソードなどはその最たるものとして紹介されています。しかし実際のイノベーションとは、ある日突然外部からの決定的な一撃のもとに起こるわけではなく、例えるならイノベーションという完成に至るパズルを、日々1ピースずつ埋めていく地道な作業の末にもたらされるものだと解説されています。最後の1ピースが埋まることで、全体が意味のあるものとして完成するわけですが、その最後の1ピースだけが特別だったわけではなく、そこに至るまでの他のピースの繋がりがあったからこそ、イノベーションがもたらされているのです。

こうした事が、実際の科学技術やビジネスの領域でイノベーションを起こした人々の実績と言葉と共に確認されます。同時に人々が実際は地道なイノベーションの過程を、単純に「神話化」して享受したくなる心の動きにも触れ、真にイノベーションを起こすことを目指す者への警句も書かれています。全10章分に渡る神話の解体の記述からは、個別の知識としても、私達の目指す態度の指針としても、学べる点が大いにある良書だと思いました。

 

最後に『人はなぜ物語を求めるのか』です。
上で紹介した「人はイノベーションを神話化して享受したくなる」という心の動きについて書きましたが、こちらの本の内容の焦点はそこに当てられていると言っていいでしょう。

私達は「世界」や「自分達」のことをストーリー形式で認識している、という話からこの本は始まります。自分の世界観に即したストーリーからは快楽を得られる反面、時に人は単なる出来事の連続(前後関係)を意味の繋がり(因果関係)で捉えてしまう間違いを犯したり(前後即因果の誤謬)、そもそもデタラメである世界を、無意識に「公正な世界」だと捉えてしまったりします(良い事をすれば良い結果になり、悪い事をすれば悪い事になる、などの収支の釣り合った世界という認識)。

自分の快楽や幸福に繋がるストーリーだけを利用して生きられればよいのですが、先の「公正な世界」を無意識、無思慮に適用しては、自然災害などに対して「私達の日頃の行いが悪いから災害という悪いことが起こった」という様に、根拠のないことで自らを苦しめてしまうかもしれません。

そうした認識の枠組みを人は不可避的に作ってしまう事に十分注意を払い、出来ればいいとこだけを取って生きていきたいと著者は主張しています。主張は楽観的に聞こえるかもしれませんが、引用されている文献や扱っているテーマの量はかなりのものです。気になるところを個別に読むだけでも参考になりますね。

これらの書籍は勉強カフェ岡山スタジオに置いていますので、興味のある方はぜひ読みに来てください。

 

以下、本読書会の基本情報を掲載します。

勉強カフェ岡山スタジオで開催している読書会は、それぞれの方がお好みの本を持ち寄り、自由に紹介していただくという形式をとっています。他の参加者の方との雑談を通して、新たな価値や自分の今までの認識を発見するといった側面に重きを置いています。
今までの読書会では、海外文学小説、日本現代小説、エッセイ、人文系哲学新書、科学エッセイ、ビジネス実用書などが紹介されました。参加者の方は、特定のジャンルの本の紹介をしていただいてもよいですし、或いは多様なジャンルに挑戦してみても面白いかもしれません。

書籍の内容紹介、人に感想を発表するなんて大変だ、とお思いの方。

私達も手探り状態で読書会を開いていますので、まだまだ正解はありません。初参加の方も他の方の発表をみて学び、気軽に意見を交換してみましょう。

皆様の参加をお待ちしています。

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開催日時: 19:00~22:00の間で2時間程度 毎月第3・4週の平日開催
開催場所:勉強カフェ岡山スタジオ内セミナールーム
定員:5名程度
参加費:会員、非会員とも無料(ただし非会員の方は時間分の勉強カフェビジター料金1,080円を頂きます)