今日は今話題の書籍『物語思考』(けんすう著)で述べられている内容を元に、私達のサービス内容が利用者の方々にとってどのような価値があるのかということを考えてみたいと思います。
けんすう著『物語思考』においては「自分のキャラクターを設定して、それにより行動(プロセス)を変えよう」ということが全体を貫くテーマとして提示されます。
内容は5つのステップに分かれており、まずはキャラクリエイト(理想の状態を設定)の為に
・ステップ1 頭の枷を外しながら、なりたい状態を考える
・ステップ2 「キャラ」の作り方
の2ステップがあり、それから自身で設定したキャラクターを活かすための3つのステップ
・ステップ3 「キャラ」に行動させよう
・ステップ4 キャラが最高に活きる環境を作ろう
・ステップ5 物語を転がそう
が続きます。
さて、今回は『物語思考』を活用して、私達のサービス『勉強カフェ』の価値を考えていきますので、考える為の問いとして以下2つを立てます。
問い①
「『勉強カフェ』を利用している人達のキャラクター性とは何なのか。どのような人が勉強(行動)しているのか」
問い②
「『勉強カフェ』はそのキャラを行動させ、結果を出す(キャラが活きる)のに相応しい環境なのか」
前編の今回は主に問い①について書いていきたいと思います。
『勉強カフェ』を利用している人達のキャラクター性とは何なのか。どのような人が勉強(行動)しているのか
こちらを考えていく上で、まず『勉強カフェ』や記事執筆者である私(柿木)の事を簡単に説明します。
勉強カフェは2008年11月、創業者の「ただ自習をするだけのための空間ではなく、社会人が仕事帰りや休日を使って勉強するのに、「通いたい!」「ここで勉強したい!」と思える勉強場所を作りたい」という思いから始まりました。
勉強カフェ岡山スタジオはその理念に共感し、2015年8月に提携店として岡山駅西口にオープン、2023年10月現在までの約8年、延べ900名程の方々に会員としてご利用いただきました。
現在店舗マネージャーの私はその内、最初の数カ月をクラウドファンディングをしたオープニング会員として過ごし、その後スタッフとして入社、途中転職で勉強カフェを離れた期間をはさみながら累計で5年半ほど働かせていただいています。
転職については、勉強カフェで働きながら取得した資格をもって勉強カフェを離れる→実務経験を積み、その後の自身の活動の糧にする→次の準備&実践の為、再度勉強カフェに戻るといった形に現状はなっています。
私自身の上記の経歴から考えても感じられる事なのですが、『勉強カフェ』は利用される多くの方にとって「最終的に到達する場所(ゴール)ではない(※)」ということがまず言えると思います。どういうことかというと、勉強場所を求めている人は既に何らかの「目標(=なりたい姿)」をこの場所の先に持っていて、「勉強カフェで自習すること=人生最大の最終目標」ではありませんよね。
「目標(=なりたい姿)」とは目先では「大学受験に合格した自分」「資格試験に合格した自分」「転職活動に成功した自分」などのはずです。
つまり勉強カフェをご利用中の皆様は、目標や夢に対する「過程(プロセス)」の中、日々の過ごし方の質を高めるために来てくださっていると考えて良いでしょう。なので、
「勉強する理由(目標・夢=理想)を持ち、その達成に至る過程を充実させる為に勉強カフェを選んだ(=お金、時間、労力をかける)人」という特徴=キャラクター性が利用中の会員の皆様にはあります。(上記①の問いの答え)
勉強カフェ岡山スタジオ ラウンジ風景
これは単なる事実、当たり前の事を書いたに過ぎないと思われるかもしれませんが、少なくとも創業当時の15年前は「自習の為のスペースにお金を払うこと」は世間で当たり前だとは考えられていなかったと思います。今でもサービス内容を説明する際には「塾とは違うんですか?教えてはくれないんですよね?」「自習する為だけにお金がかかるんですか?」「どんな人が利用しているんですか?」といった反応をいただくこともあります。
『物語思考』内のステップ1「頭の枷を外す」に通ずるところがあるかと思いますが、「お金を払って自習する」ということの価値を利用者の皆様はどのように見積もっているのだろう?というのはサービスを提供する側として常に関心があります。
ご利用中の皆様が会社や学校で「有料の自習室に通っている」ということを公言されているかは分かりませんが、同僚やクラスメートにそうした人がいた場合、ある種のキャラクター性を感じるのではないでしょうか?そして「そういうキャラクターが集っている場所」が『勉強カフェ』なので、利用者の方々はその空間の中で気兼ねなく、集中して自身の目標に取り組める(理想的なキャラクターとしての行動が出来る)のです。これは自宅や街のカフェ等では実現できない『勉強カフェ』の価値だと思います。
勉強カフェに入会された方全員に勉強する動機を伺うわけではありませんが、「目標の為に行動中、達成の為にはお金や時間、労力を惜しまない」というキャラクター性が皆様に共通しているため「どのような経緯で目標(理想)を設定しているのですか?」という部分はやはりスタッフとしてお伺いしたくなります。
これは、『物語思考』的に言えばキャラクリエイト時の思考、行動までのキャラ付け過程を伺うことと言えるでしょうか。
そうすると、人それぞれに夢や目標を抱いた背景、現在の仕事や生活の状況について感じていること、将来目標を達成して自分はこうなっている予定(理想の姿)など教えて下さり、よりその方の個別の人柄が見えてきます。話を聞いている側からすると「相手が物語の主人公になっていくように感じられる」んですね。これは個人的にとても楽しく、そういった人々の努力が実って勉強カフェを旅立たれた後にも「このような方が過去にいらっしゃったんです」と現在の利用者様に語り継ぎたくなります。
また利用者様間でも周囲の勉強仲間の背景を知ることで、自身のキャラクターについて内省を行い、キャラクターの方針・理解も深まると思います。
中には「とにかく現在の自分自身を変えたくて、努力している人々の中に身を置きたくなりました」と答えられた方もいます。「周囲の人のキャラクター性に引っ張ってもらい、自分自身も変わっていきたい」という決意の表れなのだと感じました。
「具体的な目標より先に自分の理想のキャラを決める」こちらのアプローチの方が実は『物語思考』の内容に沿った順序ですね。
(実際スタッフである私も「『勉強カフェ』のスタッフであるからには、常に何かしらの勉強をしているものだ」という役割・キャラクター性を意識して実行しており、その環境の中で公認会計士の勉強をしていた会員様から「柿木さんも会計やりましょうよ。面白いですよ」と声をかけられたことがきっかけになり、簿記サークルの設立と資格取得→転職へと繋がっています。)
その場所の価値は、その場所に集まっている人々のキャラクター性、物語性からも生まれてきているのが面白いと感じます。
後編に続きます。
(※例外として、「勉強カフェというコミュニティ運営の理念に共感し、スタッフに加わった私」という部分でしょうか。利用者様にとっては「最終到達地点」ではないけれど、「各自が次へ進むための立ち寄り場所」「何度でも帰ってこれて、初心を思い出しながら成長する場所」として、ドラクエにおける『ダーマ神殿』みたいな可能性を感じる場所にしたいなと考えたりします。今後も自分が取り組むべき夢の一つとして、勉強カフェコミュニティの維持発展に貢献したいと考えています。)